どえらい酔っぱらったときに、山崎は命知らずにも聞いてみた。
「副長は〜、どうして〜ミツバさんじゃなく沖田さんを選んだんですか〜?」
「…あ?」
土方もどえらい酔っぱらっていたので、質問した山崎をぶっ飛ばしもせずに、真面目に考えた。
「アイツは…、美人で優しくって面倒見がよくって、そのうえちょっと変わった味覚を持ってる、……まァ、男の理想とする女だよ、ホントに」
煙草を逆さまにくわえ、フィルターに火をつけるほど酔っていたので、考えたままを口にする。
「は〜まァ、味覚はともかく、素敵な女性でしたよね…」
「過去形でぬかすな、タコ! ……涙がでちまうだろ」
酒のせいか涙腺のゆるんだ土方は、ほんの少し鼻をすする。
「ま〜どうぞもう一杯」
山崎が気を利かせて徳利を手に取る。杯からざぱざぱ溢れるほど注いでも、二人とも気にしない。
「だからよ、アイツを幸せにする男は、俺以外にもいるって、そう思って…」
またもや涙。というか、鼻水。
土方は、人前で涙することがなにより嫌いなのだ。その、堪えに堪えたぶんが、鼻から溢れだす。
「は〜まァ、勝手な言い分でしょうけどね」
酔った山崎は容赦ない。
「でも確かに、引く手あまたって言うか。綺麗でちょっとボケたとこは、俺もツボでした」
「そーだろそーだろ。優しくッて男前で、アイツのことォ大ッ好きな男と幸せになってくれたらって……」
気の利く部下は、土方にティッシュの箱を差し出す。
「…で、どうして沖田さんなんスか?」
「あぁ、…うん、俺以外の誰が、あんなドSのサボり魔の人の神経逆なでするのが上手い剣だけは達者な可愛いだけが取り柄に見えるわっかりにくいヤツ好きになるかな、と」
「えぇ、なんか密かにモテてません、あの人?」
「え…」
お約束通り煙草をポロリとしてしまう土方だった。
「つか、沖田さんの可愛いとこを知ってる奴ァ星の数もいますよ。アンタだって、鬼の副長と畏れられてるつもりが、案外慕われてんですから。あ、これ、ちゃんとウラとってますよ」
酒で舌の滑りのよくなった山崎は、ちびちび杯をあけながら上司を上目づかいに睨む。
「あ〜ぁ、スゲおもいあがってんな、この人。俺しか沖田のいいところを分かってやる奴ァいねェ、みたいな。カッコ悪ィよ、土方さん」
「おま!! 山崎の分際で!」
さかずき蹴倒して山崎の胸ぐらを掴んだつもりが、なぜか天井を見上げている。……ようするに、土方はぶっ倒れた。
「…なんか、これは夢だな。こんな副長が素直に口開くわけないかんなァ…」
山崎もずるずる畳に沈む。
翌朝盛大な頭痛と吐き気にみまわれた二人は、キレイに記憶をなくしていたのだった。