とんでもゲーム機、『owee』の行列内にポツリと置かれたコタツは、非常に混雑していた。
万事屋の面々プラス、真選組の面々。そして、なぜかコタツの中に桂。
一つのコタツに六人であたるのも窮屈だが、その六人の足で揉まれる桂は、もっと窮屈だった。しかも、男が五人、なんだか臭いし。
かといって、紅一点の神楽に顔を向けるのは、気がひける。セクハラになってしまう。
そこで、湯上がりでコタツに飛び込んできたため袴をはいていない、年のわりにはつるりとした足を持つ、沖田のほうに顔を避難させたのは、もちろん当然のことだった。風呂あがりの沖田は、なにやらいい匂いがしているし。
しかし、遠慮など知らない六人の足に激しくもまれ、中の桂はしだいに追い詰められていった。
「ぎゃ!」
沖田が悲鳴をあげて、頬を赤らめる。他の五人は、ぽかんとする。
「きゃ、だって、プププ…。オジョウチャン、ガキはお家で、ねんねしてないと、痛いめみるアルヨ」
ガッっと、コタツの上に足を乗せて臨戦態勢になった二人を、保護者たちが引き離す。「コタツめくんなよ、神楽。温かい空気、逃げちゃうだろー?」
「どうしたんだ、総悟」
近藤に着物のすそを引っ張られ、沖田は拗ねた顔で座りなおした。しかし、微妙にコタツに足を入れない。
「……こンなか、なにか居るんでさァ。足に息がかかって、そんで吃驚したっていうか…」
聞いたとたん、銀時は桂をおもいきり蹴った。もちろん桂もやり返す。真撰組がいるなんてことは、すでに念中にない。
「なにぃ!!」
総悟の兄を自任する近藤と、もうちょっと微妙な立場の土方は、血相をかえて立ち上がった。が、すぐに「さぶさぶさぶ!」と、コタツに入る。
「沖田クン、気のせいじゃない? つーか、自意識過剰? こんな道端のコタツに、何が入っているって…」
「やっぱこんなか何かいやす!」
銀時の言葉をさえぎり、沖田は眉間にしわを寄せる。なぜだか、涙目になっている。
「お、俺の膝ッ小僧に、唇があたってる!」
「「なにぃぃぃっ!!」」
ユニゾンで叫んだ近藤と土方は、コタツの天板に刀を突き刺した。ブッスリ貫通した刀を見て、銀時と新八は声にならない悲鳴をあげる。
「(ヅラァぁぁっ―― !!)」
「……きゅ、きゅ―― んきゅ―― ん…」
い、犬のマネ―― !!
新八と銀時は、ありえない桂のフォローに、言葉を失う。つーか、無事だったのね。
「あ、定春! 定春アルか? 汚いもん舐めちゃ、駄目ある〜。馬鹿がうつるヨ」
ナイスフォロー、神楽! 珍しいグッジョブに、銀時と新八がハイタッチしていると、「こんな臭いとこに入ってちゃ、駄目ネ。出てくるよ〜」
神楽はコタツ布団をめくり、指でチッチと定春を呼んでいる。
ここにもばかが―― !
銀時は神楽の口に酢昆布一ダースを押し込み、黙らせる。
「おい、総悟、犬だって。吃驚させんなよ」
近藤はおおらかに笑う。しかし土方は、難しい顔でコタツを睨んでいる。
疑っているのか? 新八は冷や汗をかく。そりゃおかしいよね。あんなデカイ犬が、コタツに入ってるだなんて。
「……おィ、定春ってェと、ちょいと前に大騒ぎ起こした、獰猛なでかい犬か?」
「おいおい、冷や汗すごいよ、副長さん」
銀時はニヤリと突っ込むが、新八は開いた口が塞がらなかった。なんか、馬鹿ばっか!
「近藤さん、総悟、コタツからでろ! 噛まれちまうぞ」
「ぷぷぷ―― っ! 鬼の副長さんも、犬は怖いんだ」
銀時の突っ込みに、土方は血相をかえて座りなおす。
「馬鹿ですか、あんた―― っ!」
新八は銀時をどついた。
「(せっかくコタツから出てってくれるって方に話が進んだのに! 桂さんがこんなとこで捕まったら、俺らも共犯者ですよっ)」
「お、そうだった」
鼻血を拭きつつ、銀時は首を振る。
「おィ、やべーぞ、あんたらコタツから出たほうがいい。定春っつー駄目犬は、腹が減ったらなんでもかじる噛み癖があンだよな。ヤツに噛まれたら、命にかかわるぞ〜」
「いやぁ、俺はこう見えて、けっこう動物好きなのよ。結婚したら、奥さんと子供、白いマイホームに大型犬、みたいな?」
がはは、と笑って未来の義弟にウインクする近藤を、新八は冷めた目で見た。
「おい」
視線を向けずにコタツの中の桂に話しかける。
「こいつを噛め!」
はぁ! ふざけんな、と桂は言いたいが、ここで正体を明かすわけにはいかない。高い志があるのだ。
おいっ、と新八に蹴られてむかっ腹が立ったとき、目の前に大きな手が現れた。
「よ〜ちよ〜ち、こわくないでちゅよぉ」
近藤の舐めた言い草に、桂はブチッとキレて、ガブリと噛みついてやった。
「ぎゃ―――― っ!」
「近藤さぁん!」
今にもコタツがひっくり返されそうなとき、ガラガラガラ、と電器屋のシャッターが開いた。販売開始だ。
「うがぁぁあぁぁ!!」
土方と銀時は先を争って突撃する。
「わーさむっ! と思ったら、袴はいてなかったや」
沖田はマイペースで身支度するのだった。